ネット販売の光と影

「ファン」を増やすということ

人口には限りがあります。一億五千万、想像もできない数字です。日本の総人口にも匹敵するこの数字も、実は1万の集まり、1000の集まり、100の集まり、という具合に細分化していくことができるのです。

この世の中に生きている「人」の数は限られています。人の数が限られているということは、「コミュニケーション」も有限です。限り在る数の人が、限り在る時間で、限り在る資産を使ってさまざまな買い物をしているのが現実です。「常に新規の客をとれればいい」という考えは、理論上はいつか尽きてしまうということになります。「顧客」は無限ではないということを理解する必要があります。そして時間も無限ではないということを理解する必要があります。

通販サイトにおいて重視すべきものは、「どのようなチャンネルからどれだけ獲得するか」ということです。そして「どのように成長していくのか」ということです。常に新規の顧客だけを相手にしているのであれば、常に販促が必要です。それは「予算」を必要とする取り組みです。予算は有限です。もちろん売り上げ規模が上がれば、投下できる予算も増えるはずです。モデルとしてしっかりと利潤を残す形を構築できていれば、事業は拡大していくはずなのです。ですが、ここでしっかりと認識したいことは「予算は増やせてもインターネットのトラフィックは有限である」ということです。

「スピーカー」という検索キーワードがあったとします。それはインターネット検索エンジン上で「検索される」キーワードという意味です。ここに対して予算を投下して、自社が取り扱っているスピーカーをプッシュしたとします。「スピーカー」という検索ワードにはおそらくさまざまな「ニーズ」が込められていることだと思います。それは「買いたい」という直接的なものや、「スピーカーを作りたい」という専門的なもの、「スピーカーが壊れたから直したい」というものかもしれません。そのなかで「買いたい」とい人がどれだけいて、その人に対してどのようなクリエイティブが有効なのかということを考える必要があります。

広告がどう活きるかということは、そのクリエイティブによっても違います。表示されるタイトル、そして説明文によって効果は変わります。最初はその「効果」を「最大化」するために尽力することになります。それは販促のチューニングという意味ではごく当たり前な行為ですが、やがてその「効果」にも「天井」が来ます。それは「スピーカー」というキーワードを検索する人に「限りがあるから」です。そして全員が全員「買いたい」と考えているわけではないからです。どう改善しても「上がらない」ということであれば、そのキーワードのフィールドでは「それが限界」ということになるのです。

そのようなことを繰り返していくのもひとつの方法ですが、限り在る人の数を最大限活かすためには、「サイトのファン」を増やすという取り組みも必要です。ファンが増えればそれは「リピーター」です。最初はスピーカーを買ったけれど、また同じサイトで今度はケーブルを買った、ということであれば、「ケーブル」というキーワードに対して予算を投下しなくても売り上げが上がるということになるのです。